「三崎町史」から昔の漁師さんの話


「三崎町史 上巻 明治大正編1」という本から、明治時代の終わりから大正時代の頃の三崎の漁師さんの話を2つご紹介します。

 

1つ目は、夜に働く漁師さんの話(「三崎町史」222ページ)

 

夏から秋にかけては、夜イカ漁が主要な漁業だった。

漁師は自然に反して、昼に寝て夜に働くという生活をしなければならない。

漁師町の真昼時、漁師たちは夜の激しい労働の休息を取るために眠っている。

漁師の妻は夫の眠りを妨げないように立居に気をつける。

しかし、町の中ではどこかで赤子が泣き、子どもが騒ぐ。

コップ一杯の焼酎は漁師たちの眠り薬だった。

彼らにとっては酒は嗜好品ではなく、生活必需品だったのだ。

2つ目は、盛りを過ぎた漁師さんの話。(「三浦町史」248ページ)

 

漁師町には不思議と生き残った老人が多かった。

彼らのうち、遭難し漂流した経験がない者はない、というほどなのに。

十円も出せば古い舟を買える時代だった。

老人漁師は孫や近所の子どもを舟に乗せて、タバコ代を稼ぎに、アジを釣りに出かける。

舟の上で、潮のささやきを聞きながら昼寝をする。

昼食のおかずには、釣ったアジを割いて潮で洗って沖なますを作る。

 

このような老人漁師の生活を変えたのが、まき網と定置網だった。

大きな網が大量にアジを取るようになると、一尾ずつ釣る小さな漁業は成り立たなくなった。

仕事を失った老人漁師たちは、魚市場で水揚げの網からこぼれたアジを拾ったり、

さもなくば市場の見える公園のベンチで退屈な身を持てあますしかなかった。

 

※記載した文章は、本の内容を要約し、一部表現を変えています。

 

投稿日:2022年11月5日

市民記者:にがうり